木村水産株式会社

木村水産株式会社

新鮮な湖魚との出会い

place 彦根市 access_time 2019年12月6日更新

彦根にある木村水産株式会社では、伝統的な湖魚を高度な技術で幅広く生産しています。彦根城からほど近い平田川沿いの本社を、会長の木村泰造さんに案内してもらいました。

大通りに面した本店の店舗には、「鮎」と大きく書かれた藍色の暖簾が掛けられています。

「さあ、奥へどうぞ」

店舗の裏には大きなコンクリートの養殖池がいくつも並んでいます。温室のように屋根がかけられたものもあります。いたる所に配管が張り巡らされ、そこから汲み上げられた水が注入されています。池の水面には金属の水車のような羽が回転していて水中に空気を送り込んでいます。

「水は近くの川から引いているのですか?」
「いいえ、地下水です。地下約50メートルから汲み上げています。」
「池の中に入ったことはありますか?」
「はい、何度も。池の中に入らないことには仕事になりませんから」
「池の中は水が冷たいのでしょうね」
「はい、凍えるようです。しかし、水深が浅いので大丈夫です」

木村さんは網とバケツを携えて、池と池を隔てている不安定な細い仕切りの上を歩いていきます。そして、池の中に網を入れると魚を掬い揚げました。上部が濃い灰色で腹にかけて銀色をしています。その魚を1匹ずつそっと掴み、卵を多く抱えていそうな腹を見せてくれました。

「レストランで昼食を召し上がりましたか?」
「はい、子持ち鮎を食べました。今まで何度も鮎を食べたことがありますが、こんなに卵がぎっしり詰まった子持ち鮎ははじめてでした」
「これがまさにその子持ち鮎です。鮎は成長度合と光の量によって卵をつくりはじめますが、光の量とは要するに季節のことです。電灯を使うことでこれをある程度制御することができますが、それが難しい。日照時間を多くすると産卵後に死んでしまうのです」
「それはリスクが高いですね」
「そうなんです。そこに計測機器があるのがわかりますか?これは、池の内の気泡の量を計測しています。ITやAIを導入してより正確な制御を実現し、リスクの低減を目指しています。」
「しかし、それには莫大な電力が必要ですね。」
「はい、そうなんです。そこで私たちは、これらを全て太陽光エネルギーによる発電で賄っています。持続可能な社会に貢献することも私たちの使命なのです」

プラスチックの配管に接続されている不思議な装置を見つけたので、木村さんに尋ねてみました。

「これは、魚のポンプです。池と池の間を移動する際にこのポンプとホースを使うのです」
「魚にダメージはないですか?」
「ネットとバケツで移動するほうがよっぽど傷みます」
「魚たちはまるでショーケースの中で大事にされているみたいですね」

木村水産では、鮎の他にもビワマスや鰻、鮒寿司に使われる鮒などさまざまな湖魚を養殖しています。木村さんは、流水が注がれている黒いバケツを持ち上げて中の鰻を見せてくれました。

次に、温室のよう囲われて電灯が並んだ池に案内してもらいました。中は温かく魚特有の匂いがします。

「この黒いカーテンは何のためにあるんですか?」
「これは我々の視線を魚から隠すためのものです。魚たちは意外とナーバスなのです」

木村さんは、魚の種類ごとに使われる飼料の袋を見せてくれました。飼料は独自のレシピに従って特別に調合されており、野菜粉に対する魚粉の比率は年間を通じて調整されます。魚を健康に保つためにすべての池と設備をチェックした後、私たちは今度は加工工場に移動しました。魚を選別し、調理し、急速冷凍し、そしてそれらをパック詰めする機械を見せてもらいました。

「これは、鮎を塩焼きにするために使用する機械です。鮎を機械にセットすると、ヒーターのそばをゆっくり通過します。この機械は専用設計です。」
「それは企業秘密ですか?」
「もちろん! いやいや、冗談です」

次に、鮒寿司の発酵蔵を案内してもらいます。鮒寿司はなれ寿司の一種で、ニゴロ鮒を炊いたご飯で発酵させて作る、近江の名物料理です。薄暗い照明の蔵のコンクリートの床に、プラスチック製の桶が並んでいます。蔵の中の空気は、鋭く刺激的な匂いで満たされています。

「鮒寿司の匂いって、アンモニアですか?」
「正直なところ、わかりません。しかし、おそらくアンモニア系の匂いであると思います。一部の人々は大好きですが、逆に苦手な人も多くいます。あなたはどうですか?」
「私にはいい匂いです。重石がたくさんあります。持ってみてもいいですか?」
「どうぞ」
「ああ、思ったほど重くないですね」
「あまりにも重いと桶に乗せるのも大変ですからね。発酵食品に重いものを乗せて液体を絞り出すこの方法は非常に興味深いものです。日本ではよくある方法で、漬物、味噌、そしてもちろん鮒寿司もこうやって作ります。他の国でもそういうことをしているのかな」
「知りません。イギリスにはなさそうです。又十屋敷でこういう重石を見ました」
「昔はみんな各家庭で鮒寿司を漬けていましたから」

最後に私たちは、事務所でお茶をいただきました。木村さんは水産事業の課題について話してくれました。

「家で魚を焼いて食べる習慣というのはなくなりつつあります。アパートに住んでいる人たちは魚の匂いが心配で、若者は魚の頭が怖いのです。」
「本当に?」
「はい、スーパーでは頭を取った秋刀魚が売られています」
「インバウンド向けの計画は何かありますか?外国人観光客もきっとこの場所に魅了されることでしょう。」
「アジアの河川はしばしば汚染されているため、アジア人は淡水魚に熱心ではないと聞きました。でも、ここは水がどれほどきれいか自分の目で見ることができるので、外国人の方も満足できると思います。」
「そうなるといいですね」