鮒寿司

鮒寿司

access_time 2020年03月14日更新

鮒寿司は、近江地方の美味しい食べ物です。鮒寿司は、淡水魚を塩漬けにした後、米と一緒に発酵させたもので、現在の寿司の原型とも言われています。鮒寿司は古くから作られていたなれずしの一種で、琵琶湖のニゴロブナを1年中食べられるようにするための保存食です。「鮒鮨」や「鮒寿し」など鮒寿司の書き方はいろいろあります。

鮒寿司を作るのは地元の業者で、一般的にはマイルドな味のものが多い傾向にあります。近江の多くの家庭では、代々受け継がれてきた製法で作られており、材料の配合や保存期間を調整することで、より強い味や香りを出すなど各家庭によって様々です。米酢が発明された江戸時代には、手間のかかるなれずしから、新鮮な魚と酢飯を使ったスピード感のあるすしへと変化し、人気を博しました。しかし、琵琶湖ではフナが手に入るため近江では鮒寿司が今日まで親しまれているのです。

鮒寿司の歴史

鮒寿司の歴史は、奈良時代(700年頃)にさかのぼります。平安時代の927年に完成した『延喜式』によると、米と塩で作った鮒ずしを宮中に献上していたことが、現在の米原市で確認されています。江戸時代になると、近江国では春と秋に獲れたフナを使って鮒寿司が作られました。しかし、秋のフナは夏の高温にさらされないため、発酵が不十分で、次第に作られなくなっていきました。現在では、春のフナを使って鮒寿司を作っています。江戸時代からニゴロブナが最適とされてきたが、ゲンゴロウブナも使われます。いずれも琵琶湖の固有種です。雌雄ともに使用しますが、卵を持った雌の方が好ましいとされ、高値で取引されます。

鮒ずしの製造

現在、近江で行われている代表的な製造方法は以下の通りです。 春に獲れたフナのウロコ、エラを取り除き、卵巣だけを残して、腹を切るのではなく、口から釣り針を使って内臓を引き抜きます。その後、魚の腹腔に塩を詰め、桶の中で塩と一緒に重ねて寝かせ、最後に塩をかぶせます。塩の上には桶の上面よりも直径の小さい蓋を直接置き、蓋の上には大きな石などの重石を載せます。そして、桶は冷暗所に置かれます。

真夏まで塩漬けにした後、フナを取り出して水で洗います。塩分はほとんど除去され、わずかに塩味を感じる程度になります。その後、炊いたご飯をフナに詰めます。塩味を強くしたい場合は、米に塩を加えます。発酵を促すために酒を加えることもあります。鮒を塩漬けと同じように桶の中に並べますが、塩の代わりに炊いた米を入れる。蓋には重石をして、冷暗所で保存します。乳酸発酵のためには、空気を排除することが重要で、そのために桶の蓋の上の空間に水を入れます。また、桶の中に大きめのビニール袋を入れ、その中にフナと米を並べる方法もあります。桶の中に大きなビニール袋を入れ、その中にフナと米を入れて、袋の口を塞ぎ、蓋と重しをして空気を遮断します。

夏の間にフナに米を詰めておけば、晩秋には食べることができます。また、2〜3年放置して発酵させることもできます。乳酸発酵は、魚の腐敗を防ぎ、アミノ酸などのうま味成分の増加を促します。なお、乳酸というと牛乳のイメージがありますが、鮒寿司には乳製品は使われていません。

また、米で発酵させた後の鮒は、酒粕や味噌でパックすることで、さらに風味を増すことができます。

鮒ずしの楽しみ方

鮒ずしの食べ方は、そのまま食べる、薄く切る、ご飯にのせてお茶をかけるなど様々です。オレンジ色をした卵の塊は、チーズのような香りと食感があります。フナの皮はやや硬くて噛みごたえがありますが、噛むことでアミノ酸を多く含んだ旨味が出てきます。また、発酵させることで、骨が見えなくなるほど柔らかくなります。鮒寿司には、発酵させた米が入っており、魚の切り身の上に乗せて食べたり、そのまま食べたりすることができます。

ふなずしは、日本酒、特に山廃や貴醸酒などの濃厚な味わいの日本酒との相性がよく、特に燗酒との相性は抜群です。近江の地酒と合わせてお楽しみください。

また、発酵させた米は、アイスクリームの材料としても使われます。魚の味がするのではないかと思われるかもしれませんが、このアイスクリームは魚の味がしません。濃厚なクリーミーさと、チーズケーキのような酸味が特徴です。

鮒寿司の香り

鮒寿司には、魚のたんぱく質がうま味成分であるアミノ酸に分解されることで生じる独特の発酵臭があります。しかし、上手に発酵させた鮒ずしは、あまり強い匂いはしません。米でパックした後、発酵臭を抑える酒粕でパックし直すこともあります。

鮒寿司は、賛成派には香りの良い食べ物として、反対派には臭い食べ物として知られています。では、実際にはどのような匂いがするのでしょうか?簡単に言うと、食べごろには心地よいチーズのような、生臭い匂いがします。

鮒寿司の価格高騰

鮒寿司の製造には、手間と時間がかかり、技術と修練が必要です。残念ながら、鮒寿司に最も適した鯉であるニゴロブナは、海岸線のヨシ原の減少による水質の悪化、コンクリートによる海岸線の補強による産卵床の破壊、ブラックバスやブルーギルなどの外来種による捕食などにより、悪影響を受けています。また、漁獲量の減少や人手不足により、近年では加工した魚1匹の価格が数千円にまで上昇しています。そのため、他の種類のフナで代用することも試みられています。また、鮒寿司と同じ手法で、外来種の魚を使ったなれずしも試みられています。

希少価値の高い鮒寿司だからこそ、この機会を逃す手はありません。ぜひ、近江のお酒と一緒に美味しい鮒寿司を味わってみてはいかがでしょうか。