近江の酒

近江の酒

access_time 2020年03月20日更新

滋賀県には、面積の割に数多くの酒蔵が存在しています。家族経営の小さな酒蔵が多く、高品質な酒を少量生産しています。各蔵元の酒には個性があり、それぞれのブランドには熱狂的なファンがいます。
競い合うのではなく、互いに切磋琢磨して技術や知識を高め、酒全体のレベルアップを図っています。

滋賀県は広大な盆地で、その6分の1を琵琶湖が占めています。この盆地は、東は伊吹山・鈴鹿山系、西は比良山・比叡山系に囲まれ、雪解け水や雨水が山から浸透し、清らかな川や泉となっていたるところに現れます。この水が酒造りに最適な水となっているのです。

近江は古くから米どころとして知られており、その中にはもちろん酒造りに適した品種もありました。そのため、近江の酒蔵の一つである藤井本家は、皇室や全国の神社で使用される御神酒を提供する栄誉に浴しているのです。

近江の酒造りには、大きく分けて4種類の酒米が使われています。 近江をはじめ全国的に使われているのは「山田錦」。山田錦は、近江をはじめ全国的に使われている酒米で、特に吟醸酒の醸造に適しており、酒造りの各段階での信頼性の高さから蔵人に人気があります。玉栄はすっきりとした辛口の酒を造るのに適しています。吟吹雪は山田錦と玉栄の組み合わせ。滋賀渡船6号は、山田錦の祖先と言われています。

滋賀渡船6号は、山田錦の先祖にあたる日本古来の品種の一つですが、半世紀ほど前に使われなくなり、希少価値が高くなっていました。 しかし近年、地元の農協「JAグリーン近江」が地域ブランドの確立を目指して復活させることになりました。近江八幡市の農業技術普及センターから送られてきた約50グラムの種をもとに、試験栽培を繰り返して「渡船」を生産米として復活させたのです。この「渡船」は、山田錦に匹敵する品質で、滋賀県独自の品種として現在複数の酒蔵で使用されています。

日本酒に欠かせない3つ目の要素である酵母も地元で生産されています。酵母は米の糖分を分解して、アルコール、炭酸ガス、アミノ酸を生成します。この地域の酒蔵に生息する200種類以上の酵母を集め、選別し、掛け合わせることで、辛口でありながら爽やかで飲み飽きない味を実現しています。

#近江の酒と料理の相性

日本最大の湖である琵琶湖には様々な種類の淡水魚が生息しており、日本酒との相性は抜群です。米のうまみを活かした近江の酒は、まろやかな味わいの淡水魚と相性がよく、山廃や貴醸酒のしっかりとした味わいは、近江牛の濃厚な味わいを引き立てます。

また、近江の冬は寒く、雪も多いため、日本酒を温めて飲むのにも適しています。春や秋にも、一升瓶に入った日本酒を飲むと心が落ち着きます。また、地元の優れたバーやレストランに行けば、それぞれのタイプに合った温め方をしてもらうこともできます。

料理との組み合わせの例を以下に示します。

鯉の卵

鯉の刺身に自分の卵をまぶしたもの。近江の春祭りには必ず登場する料理です。日本酒は熱燗でしっかりとしたものを飲み、刺身の繊細なコクを引き立てます。

鮒寿司

鮒寿司には「飯」と呼ばれる発酵した米が添えられ、ニラで味付けされています。濃厚な塩味と酸味の調和が絶妙で、次から次へと杯を重ねることができます。山廃と生酛の相性は抜群です。

煮豆と海老の煮込み

この地方独特の料理です。大豆と琵琶湖産の小海老を煮込みます。香ばしい吟醸酒が豆の煮込みの家庭的な味を引き立てています。

小鮎の天ぷら

琵琶湖の鮎は成魚になっても小さいままです。春先に、この小鮎をサクサクの衣につけて塩で食べると、ほのかに香ばしいおやつになります。キリッと冷えた日本酒との相性は抜群です。

鯉の卵とじ

鯉を甘辛く煮込んだものに山椒をかけていただきます。少し熟成した純米酒を温めていただくとベストマッチです。