滋賀県の湖東地域には、琵琶湖や周辺の山々から流れる豊かな水に育まれた、たくさんの名産品があります。特に野菜や果物は種類が多く、中には味も形も他とは違う、この土地でしか味わえないものも!
個性的な近江食材を収穫してみんなでいただく「近江食材収穫体験と農家レストラン「そのばkitchen」を楽しむサイクリングツアー」、11月に開催された第二回目に参加してきました。
スカッと晴れた冬空が気持ちいい土曜日の朝10時、集合場所の「彦根駅前サイクルステーション」前はすでに参加者のみなさんで賑わっています。
全員集まったところで、今日のスケジュールやサイクリングの注意事項を確認。
ウォームアップを兼ねた準備体操では、膝やふくらはぎを重点的に伸ばします。
運営スタッフの方に見送られて、いざ出発!
「まずはガッツリ走りましょう!」というガイドさんの言葉に従って、7キロほどの道のりを多賀町に向かいます。途中では、彦根市の伝統産業でもある仏壇づくりの店が並ぶ“七曲がり”を通過。「 “7回曲がる”ことから“七曲がり”と名付けられたんですよ」という説明に、ひとつ、ふたつ…と曲がり角を数えながら進みます。
40分ほど走ると、きれいな黄緑色の畑が見えてきました!
「一般的なにんじんと比べて、糖度が非常に高いのが多賀にんじんの特徴です。これは、冬の寒い気候と、ミネラル分の多い芹川の水のおかげでしょう。柿のような甘みがあり、にんじんが嫌いな子どもでもおいしく食べることができますよ」と話してくださったのは、多賀にんじんクラブ部会長の土田さん。
思い思いの場所に陣取って「どれにしようかな〜」と選ぶのが、くじ引きみたいで楽しい!
思い切って引いてみると、土の中から鮮やかなオレンジ色が!軽い力でスッと抜けるので、楽しくて癖になりそうです。
中には大根みたいに大きいものや、
ちょっと変わった形のものも!
収穫したにんじんは、丁寧に水洗いしてお土産に持ち帰ります。
多賀にんじんは、肥料や農薬を通常の2分の1以下に抑えて栽培されており、滋賀県から「環境こだわり農産物」の認証を受けています。「生のままスティックにして食べるのが一番おすすめ。葉っぱは天ぷらにしてもおいしいですよ」と、土田さんが教えてくださいました。
収穫を終えると、にんじんジュースが用意されていました。皮のまますりおろした多賀にんじんに、同じく多賀町産の甘麹を加えた栄養たっぷりのジュースだそうで、自然な甘さがスッキリと飲みやすい!
収穫した多賀にんじんを片手に、青空の下で記念撮影。みんな笑顔で大満足の収穫体験になりました!
にんじん畑から5分ほど走ると、滋賀県を代表する大社「多賀大社」に到着しました。古くから「お伊勢参らばお多賀へ参れ、お伊勢お多賀の子でござる」と唄われるように、日本の国土と神々の生みの親である伊邪那岐(いざなぎ)と伊邪那美(いざなみ)が祀られています。
参拝客で賑わう境内を抜け、権宮司の稲毛友幸さんに、国の名勝にも指定されている奥書院庭園を案内していただきました。
「こちらは、豊臣秀吉が多賀大社に寄せた祈願文です。1588年、多賀大社に信仰が厚かった秀吉は、母の病気に際し『3年、それがだめなら2年、せめて30日でも』と延命を祈願しました。後にその祈りが成就し、当時としては大名に与えるに等しい1万石を奉納したといわれています」
「この庭は、安土桃山時代につくられました。庭そのものを歩いて回るのではなく、建物から眺めて楽しむようにつくられた全国的にもめずらしいものです」
美しい庭園を見たあとは、おやつタイム。多賀町名物の糸切餅をいただきます。今回は、糸切餅の名店「莚寿堂」と「多賀や」の2種類を食べ比べ!
莚寿堂の方は、なめらかなこし餡に少しの塩味が効いていて、甘さが引き立ちます。多賀やの方はお餅が柔らかくモチモチした食感がたまらない!どちらも甲乙つけがたいおいしさです。甘いもを食べて、エネルギーチャージも完了!
満開のコスモスを眺めながら、甲良町にある「せせらぎの里こうら」に到着しました!
せせらぎの里こうらは、地元の方々に愛される道の駅。甲良町でとれた新鮮な野菜や石窯で焼いた本格ピザ、生地とクリームにこだわったクレープなど、周辺地域のおいしいものがギュギュッと集まる人気スポットです。
売店には「ひこにゃん巻き寿司」や「ひこどら」も。かわいくて食べるのがもったいない!
それぞれに休憩を取り、小腹も満たされたところで次はいよいよ本日2回目の収穫体験です!
次なる収穫体験は、愛荘町が誇る伝統野菜「秦荘のやまいも」。見晴らしのいい畑に、目印の白い旗が風になびいています。迎えてくださったのは、この畑を所有する北村栄弘さんと、やまいも栽培歴60年という黒川利平さん。
「秦荘のやまいもには、300年の歴史があります。昔、お伊勢参りのお土産に持ち帰った山芋をこの土地で栽培したのが始まりで、当時から今まで試行錯誤を繰り返して他にはないこの形、この味になりました。山芋は、一つの種芋から一つしか育たない上に、場合によっては植えたものより小さい芋ができることもあります。そんな中で、手を加えながら次の一年もみなさんの元に届けられる出荷量を維持し続けるのが難しいところ」
「山芋は自分の育ちたいように育つので、暴れたような形のものも出てきます。出荷する時は形の良いものを選びますが、今日はありのままの大きさ、形を楽しんでいってください」という北村さんの言葉を合図に、山芋堀りがスタート!
一見何もないように思える畑ですが、よく見ると山芋の頭が少しだけ出ています。
「そこにあるよ!」「ここにも!」と声を掛け合いながらスコップで丁寧に掘っていきます。
「もともとゴツゴツして手のひらのようだった山芋から、形の良いものを毎年選んで植え続け、今のような掘りやすい形に統一することができました。昔は作り手によって形が違ったから、ひと目見ればどの家の山芋かわかったぐらい。生ですりおろして、とろろで食べるのが一番おいしいと思います」と黒川さん。
山芋は非常に柔らかく、どんな形をしているか掘るまでわからないので、丁寧に作業を進めます。最初はなるべく遠くから土を掘り起こし、小さなスコップに持ち替えて少しずつ丁寧に掘り進めていくのが上手に掘るコツだとか。
早速すりおろした山芋をいただいてみると、この粘り気!一口とったはずが、まるごと持ち上がってしまいました。
そのまま食べるとまろやかな甘い味、お醤油を垂らすとよりいっそう旨味が増して、二度おいしい!秦荘のやまいもは天皇陛下の大嘗祭にも供納されたそうで、黒川さんは昨年黄綬褒章を受けられました。
収穫体験を終えたら、いよいよランチタイム!「そのばkitchen」ツアーでおなじみのフードカーから、今日収穫した野菜で作ったワンプレートが次々と運ばれてきます。
料理を担当された彦根キャッスルリゾート&スパの足立料理長が、メニューの説明をしてくださいました。
「右下にあるのが、おろしたての山芋を生のまま海苔巻きにしたものです。山芋そのものの旨味をどうぞご堪能ください。その左が秦荘のやまいもと多賀にんじんのジャーマンポテト、カップに入っているのが近江牛と秦荘のやまいも、多賀にんじん、そして彦根の赤こんにゃくで作った肉じゃがです。今回は、素材の魅力をいろんな形で楽しんでいただくことをテーマにお料理を作らせていただきました。どうぞごゆっくりお召し上がりください」
海苔巻きはもっちり、ジャーマンポテトはホクホク、肉じゃがはねっとりと濃厚。同じ秦荘のやまいもから、こんなにいろいろな食感が楽しめるなんて驚きです!
「もう一品、温かいものを」と出されたのは、秦荘のやまいものべた焼きに、琵琶湖産のスジエビのソースをかけたもの。山芋の甘みとスジエビのだしの味、できたての温かさが体に染み渡ります。デザートに多賀にんじんのゼリーをいただいたら、みんなそろってごちそうさま!
農家さんの顔を見て、お話を聞いて、自分たちで収穫した食材をいただく。この体験はやっぱり格別です!
お腹がいっぱいになったところで、サイクリングツアーもいよいよ終盤戦。最後の目的地は、愛荘町にある「豊満神社」です。
宮司さんの楽しいお話に参加者一同笑わされた後は、境内の見どころをめぐります。
豊満神社は勝運、縁結び、美人祈願のご利益があるそうで、絵馬もかわいいハート型!
さらには恋占いができる「ハート石」が置かれていて、持ち上げて軽いと感じればその恋は叶う、重いと感じれば叶いにくいのだとか。
本殿の裏には「美人の木」といわれる樹齢300年の大木があり、木肌に触れると美肌のご利益があるそうです。みんなで触って、美肌パワーをチャージ。
しっかりお参りも済ませて、帰路につきます。
最後のおやつは、地元の老舗和菓子屋さん「しろ平老舗」の人気商品「きんかん大福」。白餡の優しい甘さと金柑のさわやかな苦味がサイクリングで疲れた体を癒やしてくれました。
帰りは近江鉄道の愛知川駅から自転車ごと電車に乗って、一気に彦根駅へ。
ゴールして自転車のメーターを見ると、走行距離は約30キロ!青空の下でたくさん食べて、笑って、自然の中を走り抜けた大満足の一日でした。家に帰ったら、お土産にもらった多賀にんじんと秦荘のやまいもで、自分でも肉じゃがを作ってみようと思います!